字幕翻訳の作業スピードについて スケジュールを決める
新人の頃は、映像とスクリプトが届いたらとにかくやれる分だけ作業する毎日でした。
しかし、だんだんと自分の作業スピードが分かってくるとスケジュールが立てられるので、少し余裕を持って毎日の作業と向き合ったり休日を取ったりできるようになりました。
1作品を何日で訳す?
以前、1日7~8時間の作業で訳せる分量は「10~15分」と書きました。
つまり、スポッティングやチェック作業を含んで
45分ドラマなら5日間
60分ドラマなら7日間
の作業期間で訳せるということです。
内容にもよりますが、映画はドラマに比べて台詞が少ないので、
120分映画なら7~10日間ぐらいで作業できることが多いです。
一方ドキュメンタリーや特典映像のコメンタリーは調べものに時間がかかる傾向があるので、ドラマの1.2~1.5倍ぐらいは作業期間が必要だと思ったほうがいいでしょう。
かの戸田奈津子さんは、テレビなどでよく
「映画1本を1週間で訳す」
とおっしゃっています。
また2015年4月号の「Amelia」によると菊地浩司さんは、
「120分の映画を4日で訳す」
とのこと。
「早っ!」と思いましたが、菊地さんの場合は1日の作業時間が12時間ぐらいのようなので、1日7時間で換算するとやはり7日程度になりますね。
ただ大御所はスポッティング作業もしませんし、お弟子さんなどに下訳を頼んでいることも多いです。
私のような下々の翻訳者とは環境が違うので、単純に数字だけでは比較できない面もあります。
スケジュールを決める
私の場合は、スポッティングに1日、チェックに1日を当てて、残りの期間で1日何枚こなすか目標を決めていきます。
例えば600枚の字幕がある45分ドラマなら、
1日目 スポッティング
2日目 200枚訳
3日目 200枚訳
4日目 200枚訳
5日目 チェック
という具合です。
ドラマや映画はストーリーに乗っていくと進みが早くなるので目標以上の枚数をこなせる可能性があるのですが、ドキュメンタリーや特典映像はそのようなこともなく一律ですね(笑)。。。
苦手な分野でなかなか作業が進まない時は、
「1時間に20枚」などと1時間ごとの目標枚数を決めるようにしています。
精神的に追い込まれるので(笑)、余計なネットサーフィンを遮断することができます。
スピードが求められる傾向
上に挙げた作業期間はあくまで平均的なもので、動画配信サービスで日本語版作品が量産されている昨今では、よりスピードが求められるようになりました。
スピードを上げて数をこなせば収入を増やせますが、
あれやこれやとうまい台詞を考えるのが映像翻訳の醍醐味だと私は思っているので、
なかなか作業スピードが上げられません。。。
ギャラの記事にも書いたのですが、料金の相場も低下傾向。
例えば45分ドラマを作業した場合の報酬は、
①15,000円/巻なら、75,000円。
②1,000円/分なら、45,000円。
日給15,000円を目指すとすれば、①なら作業期間5日ですが、
②なら作業期間3日に収めなければなりません。
単純計算ではありますが、②の案件で①と同等の報酬を得るためには、
それほど作業を早める必要があるのです。
一翻訳者としても、じっくり作品に向き合っていきたいので、
「安かろう悪かろう」の風潮が広まらないことを願っています。