ドラマシリーズは1人で担当するのが理想 字幕翻訳者の愚痴
NETFLIX、Amazon Primeなど動画配信サービスの急成長で、日本語版制作業界にも大きな弊害が生じています。
それは、とにかく「早く、安く仕上げてくれ」という要望。
1人の翻訳者がドラマ1本(45~60分)仕上げるには1週間前後かかりますから、それ以上のスピードを求められる場合には、数で補うしかありません。
つまり、動画配信サービスで公開されているドラマシリーズの大部分は、1作品につき複数の翻訳者が担当していると言っていいでしょう。
「複数の翻訳者」って何人?
ドラマシリーズの場合、1話完結ものだとしてもやはりキャラクター設定やベースのストーリーが重要になりますので、なるべく少ない人数で回すことが多いです。
2人、多くても3人でしょうか。
2人の場合は、1人が奇数話、もう1人が偶数話を担当するような感じです。
ただ、長尺ドラマの場合は作業に時間もかかりますので、1話ごとに翻訳者が違うという場合もあります。
本当にひどい場合は、1話を複数の翻訳者が分担することも。
私も過去に一度だけ、「1話の半分を訳す」という案件を担当したことがあります。
しかもそれがミステリーものだったので、情報の出し方などには気を使いました。。。
複数の翻訳者が担当することのデメリット
私の場合、担当以外のエピソードはあくまで流して見る程度。
まずじっくり見る時間もないし、その視聴時間はサービス残業みたいなものですからね。。。
なので、自分の担当以外のエピソードに関する話題については、ディレクターに判断を任せています。
表記や口調に関しても、なるべく統一することを心がけてはいますが限界があるので、結局はディレクターの負担が大きくなってくると思います。
複数で担当する時は、一人称、口調などもなるべく無難なものを選ぶようにしています。
やはり自分だけの担当作品ではないので、「冒険」はしづらいですね。。。
1人で担当することのメリット
実は現在、久々に1人でドラマシリーズを担当することになりました!
遡ってみると、かれこれ1年半ぶりのことです。
それほど「複数で担当する」ことが当たり前になっているということでしょうね。。。
さて、1人で担当することのメリットはやはり、表記や口調など自由に表現できる!ことでしょうか。
また、やはり作品への思い入れが強くなりますので、完成度は高くなると思います。
先に挙げたように、どうしても複数だとディレクター頼みの部分が多いので、「あとは頼む」という感じなのですよね。。。
1人だと、もっと翻訳者が責任を負う部分が大きくなりますが、それは本来当たり前のことなので「心地よい責任感」だと思っています。
他人を気にせず、自由に訳せるってすばらしい!
まとめ
ドラマシリーズを複数の翻訳者で回すことは、スピード面でいえばメリットがあるのでしょうが、質の低下は否めないと思います。
クライアントには、スピードよりも質の良い翻訳にもっと目を向けてもらいたいものですね。