日本語版制作、映像翻訳以外の作業について ギャラの相場は?
かねがね字幕翻訳者のギャラについて取り上げて(嘆いて)いますが、今回は翻訳以外の作業について、そしてその報酬についてご紹介したいと思います。
字幕翻訳の相場については、こちらの記事をご覧ください↓
ちなみに昨年と事情が変わって、私も最近では1分単位の仕事がだいぶ増えました。
その辺の嘆きは、今年に入ってからの「お金」カテゴリーの記事をご覧ください(笑)。
さて、私は元々制作会社勤務だったこともあり、独立して数年は翻訳以外の作業にも多く携わっていました。
また翻訳者志望の方も、まずはチェッカーから始める方がほとんどではないでしょうか。
どのような作業があるのか、ご紹介したいと思います。
タイミング(スポッティング)
SSTなど字幕制作ソフトでタイミングを取ることです。
新人・中堅字幕翻訳者の大部分はスポッティング作業込みで翻訳の仕事を受けますが、ベテラン翻訳者の場合はハコ切りだけで、あとは制作会社がスポを取るということが多いです。
基本的には制作会社のスタッフが行いますが、繁忙期で人手が足りない時などは外注しますので、「スポッティングのみ」という作業が新人翻訳者に回ってくることがあります。
相場は1巻1,500~2,000円程度。
ちなみに私の場合、翻訳のみの料金が1巻13,000、それにスポ2,000円を含めて、
翻訳料金1巻15,000円という形になります。
リライト
英語をはじめとする主要言語以外のマイナーな言語で、それに対応できる字幕翻訳者がいない場合、ベタ訳の翻訳原稿を渡されることがあります。
それをきちんと字幕用に書き換える作業がリライトです。
しかし最近では、映画制作サイドが英訳スクリプトを用意することがほとんどなので、このような作業は少なくなってきたように思います。
また、英語など主要言語でもインタビューなどですでにベタ訳がある場合も、この作業に該当します。
相場は1巻8,000円程度。
誤訳チェック・校正、ディレクション
誤訳チェックと校正は、冒頭に書いたようにいわゆる「チェッカー」が行う仕事です。
映像を見ながら、誤訳・誤植がないかチェックしていきます。
チェッカーは、日々多くの翻訳原稿を目にしますので、やはり翻訳志望者が一度は経験しておくべき業務だと思います。
さらに、制作会社では映像を見ずに最終段階の原稿(文章)のみをチェックする校正者もいます(校正会社に委託することもあり)。
また、チェック、校正、演出を含めて翻訳者とやり取りしながら最終データまで作り上げるのが、ディレクションです。
チェックの相場は1巻1,000~1,500円程度。
ディレクションの相場は1巻3,000円程度。
チェックに関しては、「1本1万円」などと「巻」ではなく本単位の場合も多いと思います。
はっきり言って、大変な割に結構安いです。
立ち会い
字幕のミックス作業や吹替のアフレコ作業に立ち会うことです。
字幕翻訳者は通常立ち会いの必要はありませんが、吹替翻訳者は立ち会いの機会が多いと思います。
私は吹替翻訳者として立ち会いをしたことがないのでその相場は分かりませんが、字幕ディレクターとして立ち会いをしていた時は、1本5,000円でした。
タイミングオフセット
オフセットとは、素材の差し替えなどで本素材にタイミングを合わせることです。
この作業は通常、制作会社のほうで行われます。
分かりやすいカット変わり部分を基準にして、タイムコード計算機で引き算して。。。という工程ですが、私は数字が苦手なので大嫌いな作業です。
翻訳者などが行う場合、相場は1本3,000円程度。
最近では、ネット配信作品などで頻繁に映像差し替えが行われることが出てきました。
それに伴い翻訳者がオフセット作業をやらされることもあります。
翻訳者側は必ず、
「オフセットは先方でやってもらうこと」
「それが無理なら、オフセット作業を支払ってもらうこと」
を徹底すべきだと思います。
でないとタダ働きになりますからね。。。
まとめ
ここにご紹介したのは、翻訳者が関わることのある翻訳以外の作業であって、実際には他にも多くの作業を経て日本語版作品が作られています。
映像翻訳者志望の皆さまにも、チェックをはじめ翻訳以外のあらゆる制作の仕事にチャレンジしてみることをお薦めします。