翻訳実績の公開とクレジットについて 映像翻訳のちょっと怖い話
たまにブログやアメリアのプロフィールなどで、実名で翻訳実績を公表されている映像翻訳者さんをお見かけします。
アメリアは不特定多数が見るわけではないのでブログよりはハードルが低いかもしれませんが、
私的には「勇気あるな~」と思います。
かく言う私もアメリア会員なので、DVDなどに名前がクレジットされた時には「会員の活躍」欄に載ってしまうんですけどね。
まああれはあれで、個人の「実績」というより作品を宣伝してもらえる意味ではありがたいことだと思っています。
今となっては背筋の凍る話
本題に入りますが、私が翻訳実績を公開することに積極的じゃない理由は、
制作会社時代にある先輩社員Aさんがこんなことを言っていたからです。
某翻訳会社(Z社とします)のサイトを見ていたAさん。
「Z社ってさ~、あんなひどい翻訳上げてきたくせに、堂々と実績リストに載せてるんだけど」
そう言って鼻で笑っていたのです。。
当時もドン引きしましたが、今となっちゃホラーシーンのように蘇ってきます。。。
翻訳は翻訳者だけでできあがるものじゃない
私は、実績をアピールしたい翻訳会社の気持ちも、出来の悪い翻訳に苦戦する制作会社の気持ちも理解できます。
ところでAさんが揶揄した作品、Z社のクレジットは載らなかったはず。
やはりそのような作品を自社の「手柄」としてアピールした場合、よく思わない人がいる可能性は考えられます。
だから私は、クレジットが載らない作品をあえてネット上で公開することには注意しようと思ったわけです。
クレジットがある場合、ない場合
ちなみに翻訳者名のクレジットというものは、パッケージ(DVD)でも掲載される場合とされない場合があります。
修正が○割以上入った場合は翻訳者名を出さない、などとルールがある時もあれば、最初から制作上の方針でクレジットは入れないと決まっている作品も。
また、放送は吹替なら翻訳者名がたいていクレジットありですが、字幕は局によって対応が様々。
ネット配信の場合、Netflixは大体クレジットが付きますが、HuluやAmazonは付かないことがほとんどかな?と思います。
2017年12月追記:
最近担当したAmzonプライム・ビデオの作品はクレジットありでした!
翻訳者にとってのクレジット
クレジットがあるとないとでは、翻訳者のモチベーションも多少は変わりますよね。
以前は自分の翻訳作品がレンタル店に並ぶと、裏面に翻訳者名が載っているか、目を皿のようにして確かめていました。
というのも、肝心の部分がたいていバーコードで隠れてしまっていますので、もういろんな角度で確かめるわけです(笑)。
これも、サンプルDVDを頂いていればやる必要はないのですけど、
翻訳会社経由の案件は、サンプルなど送られてくることは普通ないですからね。。。
レンタル店で目を皿のようにしている人がいたら、それは新人の映像翻訳者かもしれません(笑)。
まとめ
さて、本題が翻訳実績の公開とクレジットの間でブレてしまいましたが、結局のところは制作側と翻訳者の信頼関係がすべてということだと思います。
二者の間の連携が取れていないことで、「あんなひどい翻訳・・・」という状況になったのではないでしょうか。
「ひどい」と思われないようなクオリティの翻訳を上げることは当然のことですが、Aさんの言葉を思い出すたびに取引先との信頼関係を大事にしていこうと思うミフミでした。