媒体や作品ジャンルによって変わるルールやテイスト 字幕制作裏話
字幕いえば、1秒につき4文字、横字幕は1行に13~14文字というのが基本ルールとなっています。
またその他いろいろと細かいルールはあるのですが、
仕事を始めてみると媒体(地上波・BS・CS、DVD、ネット配信など)
または作品のジャンルによって、それぞれ独自のルールがあることに気づきます。
NHKは老若男女向け、正しい日本語重視
NHKは、1秒につき3文字だとどこかで習いました。
翻訳学校か制作会社かどちらかだったと思いますが、うろ覚えですみません。。。
しかし実際に私が字幕を担当した時は、1秒4文字でOKでした。
若者向けのエンタメ番組だったからかもしれませんけど、恐らく現在は1秒3文字というのはそれほど重視されていないのでは?と思います。
一方細かく注意されたのは、
…してる → …している
だけど → だけれど
のような口語体ですね。
これは他の案件では一切指摘されないけどけれど、NHKでは直されました。
また、カタカナ語も極力日本語に直すように言われました。
10/6追記:読者の方からアドバイスをいただき、「某国営放送」という表現を「NHK」と変更させていただきました。ご指摘ありがとうございます。
CSのエンタメ系チャンネルは自由度高し
NHKと違ってエンタメ系の放送局は、少し文字数が多めでも許容されます。
アーティスト名を英表記で出すよう指定している音楽専門チャンネルも。
例えば、
ジャスティン・ビーバー
↓
Justin Bieber
のように、英表記にすると日本語より3.5文字分も文字数を節約できます。
エンタメ系チャンネルの視聴者は主に若者だということで、文字数、表記など割と自由度が高いです。
こちらの場合は、NHKと逆で「だけれど」を「だけど」と直されることになるでしょう。
ドキュメンタリーは情報量重視 1枚が長め
字幕1枚は最長6秒ということが多いですが、ドキュメンタリーの場合は7秒ぐらいまで許容になります。
また、横字幕1行の文字数も16文字までOKということも。
ドキュメンタリーはエンタメ番組のような雰囲気よりも、正確な情報が重視されますので、年代、固有名詞、数字など削れない単語が多いのです。
「アルベルト・アインシュタイン」とか出した時点ですでに13.5文字なので、
やはり1行16文字のほうが多くの情報を出せますよね。
ただ、これは全ジャンルに言えることですが、文字数的にはカナは2文字でひらがな1文字分とおおまかに見なしてOKです。
「アルベルト・アインシュタイン」なら、6.5文字ということですね。
担当者によって異なるかもしれませんが、私は今までこのように換算してきて修正を求められたことはないです。
ネット配信も自由度高め フレームレートが異なる
ネット配信番組は放送と違って自分で選択して視聴するものなので、
原語ではFワードなど放送禁止用語もバンバン出てきます。
そういう背景もあって、日本語字幕も割と自由度が高いように思います。
某動画配信サービスでは、1枚の字幕に2人の台詞を入れるのも特例で認められています。
(私は今のところやったことがないですが。)
またネット配信はフレームレートが24fpsになります。
放送・DVDでは1枚につき18フレーム前後が最小ですが、ネットでは12フレーム程度までが許容になります。
まとめ
映像翻訳に縁のない人には分かりにくいちょっとマニアックな話になってしまいました。
様々なクライアントの多様なジャンルの作品を手がけるうち、
「この作品なら、もっとハジけてもいいかな」とか
「このクライアントはカタいほうがいい」とか
「いい塩梅」が分かってきますので、使い分けしていけるといいですね。
今回はDVDについて取り上げなかったので、また機会があれば記事にしたいと思います。