フリーランス映像翻訳者の孤独LIFE

映像翻訳者になって早10年。仕事、育児、お金、孤独な引きこもり生活のいろいろ。

字幕翻訳者ミフミが実践する文字数節約

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字幕翻訳といえば、文字数との闘いです。

1秒4文字という字数制限があるので、直訳していてはとても文字数が収まり切りません。

一説によると、字幕は原文の4割程度しか訳出できていないとか。

確かに情報量が多い作品の場合は、「4割」もあり得る話だと思います。

 

直訳とは違う「意訳」をすることもあるので、時には「原文と違う!」とお叱りを受けることもありますが、つまり字幕翻訳とは翻訳というより「要約」なのですよね。

字幕翻訳者としてミフミが好きな言葉

 

いつも文字制限に苦戦しているわけなので、1文字で読みが3文字以上ある漢字は大好きです。

「表(あらわ)す」

「従(したが)う」

「陥(おとしい)れる」

とか、そういう類のもの。

 

「承(うけたまわ)る」なんか使えた時には、

「よっしゃ!」と小躍りしてしまいます(笑)。

 

あとは四字熟語も優秀ですね。

難解な四字熟語はNGですが、分かりやすいものなら文字数節約に一役買ってくれます。

 

例えば、

「彼とは気持ちが通じ合った」(11文字)

   ↓

「彼とは意気投合した」(9文字)

なら、2文字の節約。

 

いろいろ試して失敗を繰り返した」(15文字)

   ↓

「試行錯誤を繰り返した」(10文字)

なら、5文字の節約。

 

漢字の多用は字幕を読みにくくしてしまうものの、四字熟語は端的で意味が伝わりやすいので、程よく取り入れてもいいと思います。

 

直訳すると長すぎる英文

文法用語で何と言うか分かりませんが、恐らく「関係代名詞」でしょうか。

"You know what I'm saying?"

のような"what"を「~なこと、もの」と訳す場合です。

これは決まり文句で「俺が言ってること、分かるだろ?」の意味ですが、タイミングを取ると1秒(4文字)前後なので、

「分かるだろ」

「だよな」

とするのが無難でしょうか。

 

"I don't know who I am."

直訳「自分が誰なのか分からない」。

これは別に記憶喪失とかではなく(笑)、内面的な葛藤を表すものです。

2秒なら文字数は8文字前後。

 

「自分が何者か分からない」(11文字)

直訳で分かりやすいのですが、もう少し文字数節約するなら「何者か」の部分はバッサリ切って、次のように言い換えてはどうでしょう。

「自分を見失う」(6文字)

状況によっては「自分を見失いそう」でもいいかもしれませんね。

 

"Do what you think is right."

直訳「君が正しいと思うことをやれ」

字で見ると結構長いのですが、原音では1秒ちょっとなんですよね。

「試行錯誤」して私が思いついた訳文はこれ。

「信念に従え」(5文字)

話者が年配の男性だったので、これはうまくハマったと思います。

女性だったらまた難しかったですね。

 まとめ

 

振り返ってみると、「失う」とか「従う」とか、読み3文字の漢字を活用していますね(笑)。

 「たかが1文字、されど1文字」の探求は続きます。

 

太田直子さんのエッセイにも、字幕翻訳に関する苦労話が多く書かれていますのでお薦めです。

 

字幕屋のニホンゴ渡世奮闘記

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