字幕翻訳者ミフミが実践する文字数節約
字幕翻訳といえば、文字数との闘いです。
1秒4文字という字数制限があるので、直訳していてはとても文字数が収まり切りません。
一説によると、字幕は原文の4割程度しか訳出できていないとか。
確かに情報量が多い作品の場合は、「4割」もあり得る話だと思います。
直訳とは違う「意訳」をすることもあるので、時には「原文と違う!」とお叱りを受けることもありますが、つまり字幕翻訳とは翻訳というより「要約」なのですよね。
字幕翻訳者としてミフミが好きな言葉
いつも文字制限に苦戦しているわけなので、1文字で読みが3文字以上ある漢字は大好きです。
「表(あらわ)す」
「従(したが)う」
「陥(おとしい)れる」
とか、そういう類のもの。
「承(うけたまわ)る」なんか使えた時には、
「よっしゃ!」と小躍りしてしまいます(笑)。
あとは四字熟語も優秀ですね。
難解な四字熟語はNGですが、分かりやすいものなら文字数節約に一役買ってくれます。
例えば、
「彼とは気持ちが通じ合った」(11文字)
↓
「彼とは意気投合した」(9文字)
なら、2文字の節約。
「いろいろ試して失敗を繰り返した」(15文字)
↓
「試行錯誤を繰り返した」(10文字)
なら、5文字の節約。
漢字の多用は字幕を読みにくくしてしまうものの、四字熟語は端的で意味が伝わりやすいので、程よく取り入れてもいいと思います。
直訳すると長すぎる英文
文法用語で何と言うか分かりませんが、恐らく「関係代名詞」でしょうか。
"You know what I'm saying?"
のような"what"を「~なこと、もの」と訳す場合です。
これは決まり文句で「俺が言ってること、分かるだろ?」の意味ですが、タイミングを取ると1秒(4文字)前後なので、
「分かるだろ」
「だよな」
とするのが無難でしょうか。
"I don't know who I am."
直訳「自分が誰なのか分からない」。
これは別に記憶喪失とかではなく(笑)、内面的な葛藤を表すものです。
2秒なら文字数は8文字前後。
「自分が何者か分からない」(11文字)
直訳で分かりやすいのですが、もう少し文字数節約するなら「何者か」の部分はバッサリ切って、次のように言い換えてはどうでしょう。
「自分を見失う」(6文字)
状況によっては「自分を見失いそう」でもいいかもしれませんね。
"Do what you think is right."
直訳「君が正しいと思うことをやれ」
字で見ると結構長いのですが、原音では1秒ちょっとなんですよね。
「試行錯誤」して私が思いついた訳文はこれ。
「信念に従え」(5文字)
話者が年配の男性だったので、これはうまくハマったと思います。
女性だったらまた難しかったですね。
まとめ
振り返ってみると、「失う」とか「従う」とか、読み3文字の漢字を活用していますね(笑)。
「たかが1文字、されど1文字」の探求は続きます。
太田直子さんのエッセイにも、字幕翻訳に関する苦労話が多く書かれていますのでお薦めです。