フリーランス事件簿 本当にあったギャラ未払いの話 ~翻訳料回収~
独立して1年目は、どんなにキツい仕事も安い仕事も断らず、休日もなくがむしゃらに働いていました。
そんな時、新たに翻訳者を募集している会社を見つけ、経歴書を送ったのが事の始まり。
その会社(以下、D社とします)からは、超メジャー映画のコメンタリーや特典など、新人翻訳者にとっては夢みたいな仕事を次々と依頼されました。
実際のところ、自分の屋号を検索すると今でもD社から依頼された作品がいくつかヒットしますから、それほど有名な作品ばかりだったということです。
ギャラは1巻10,000円程度で高くはなかったのですが、魅力的な作品が多かったので、どんどんD社の依頼を請けていました。
また、担当者とも電話やメールで連絡を取り合った感じでは好印象でした。
しかし、最初の翻訳料が振り込まれるべき日。
ネットで見たところ入金なし。
数日たっても入金なし。
問い合わせをすると、「経理担当者が休暇を取っている」という回答でした。
その後入金があったものの、また翌月の入金が遅れ…という状態です。
私も当時は新人で、とにかく実績をつくることに必死で後先を考えずに仕事を請けていたのです。
また彼らも、無知な新人を利用していたのかもしれません。
入金が数か月にわたって遅れたある時、ついに担当者に連絡がつかなくなりました。
D社の社長に訴えると、「社員が勝手に仕事を取ってきて発注した」という回答。
今でも持っている書類には、「人事変動があり混乱が生じた」という内容が記されています。
真実はいまだ分かりません。
私は今までの発注書やメールでのやり取りをプリントアウトして社長に送りました。
それでも入金がなかったので、ネットで調べた対策として内容証明を送ることにしました。
今も当時の書面が残っているので、記録としてご紹介しておきます。
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催告書
私は、貴社に対し、平成○年○月に○円分、○月に○円分の翻訳を納品しました。
ところが、約束の期日が経過したにもかかわらず、本日に至るまでお支払いいただいておりません。
つきましては、本書面到達後10日以内に、請求書に記載しました銀行口座に翻訳料をお振込みください。
お支払いがない時、または誠意ある返済計画の提示がない時は、裁判その他の法的手段を執ることになりますので、あらかじめご承知おきください。
平成○年○月○日
住所
名前
相手の住所・会社名・社長の名前
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という内容です。
ちなみに未払いの金額は合計35万円ほど。
そりゃ会社単位でははした金でしょうけど、個人にとっては大金です。
内容証明を送るだけでも大変でした。
というのも、内容証明はどこの郵便局でも送れるわけではないのです。
最寄りの小さい郵便局へ行くと、「うちでは受け付けていないので、集配局へ」ということで、しかも受付終了時間が迫っていたのでバスに乗って移動しました。
その後、社長ではなく法務担当か弁護士か分かりませんが、第三者と電話で話しました。
「10日以内は無理」という主張でしたが、私は「入金がなければ訴訟を起こす」と訴えました。
少額訴訟のことも真剣に視野に入れて勉強していましたが、その後無事に入金。。。
この経験は、新人フリーランスには厳しい試練でしたね。。。
誰も自分を守ってくれる人はいない。
フリーランスの孤独を痛いほど感じました。
また、私の翻訳を評価してくれていた担当者に、実はだまされていたということも、新人にはキツい現実でした。
お金が振り込まれなかったことよりも、何の疑いもなく信頼していた人に裏切られたことのほうが私にとっては痛手だったのです。。。
その後、未払いトラブルには巻き込まれていません。
気をつけるべきことは、新規で取り引きするクライアントとはしっかり書面で契約を交わすこと。
また入金が1日でも遅れたら、取引先と連絡を取ること。
フリーランスにはこのようなリスクもあるということを、知っていただければと思います。
また、特に新人のうちは翻訳者ネットワーク「アメリア」を通して求人に応募することをお薦めします。
万が一何かあった場合には相談に乗っていただけますので、安心です。