フリーランス映像翻訳者の孤独LIFE

映像翻訳者になって早10年。仕事、育児、お金、孤独な引きこもり生活のいろいろ。

洋画の邦題は誰が決める? 配給会社か翻訳者か?

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一時期、戸田奈津子さんの字幕翻訳のことが叩かれるようになって、

専門のサイトとか2ちゃんねるのスレッドが立つほどの騒ぎになりました。

(今もあるのかもしれませんが、未確認。)

そんな時、たまに「彼女の翻訳作品の邦題がおかしい」という書き込みを見たりしたので、

「翻訳者が邦題をつけていると思っている人もいるのかしら?」

と思って今回ネタにしてみます。

 

翻訳者と映画タイトルについて(私の経験)

 

私は、全国上映の劇場公開作品を担当するような大御所翻訳家の足元にも及ばない存在ですが、今まで30本弱ほど映画作品の字幕をやらせてもらいました。

単館上映、映画祭、試写用、DVDスルー、動画配信・・・

など様々な用途の作品がありましたが、タイトルについてアドバイスを求められたのは1作品だけでしたね。

 

それも「候補をいくつかください」というだけで、もちろん決定権はないです。

 

その他はすべて、公開・リリースされてから

「え~、こんなタイトルになったの!?」と

大体の場合は軽くショックを受けます(いい意味の時も悪い意味の時もある)。

 

そして、誰が邦題をつけているかというと、

劇場公開作品は配給会社、その他の作品は販売元(配信元)ですね。

 

私でも1回だけアドバイスを求められたことがあるため、

恐らく大御所翻訳家の皆さまは、タイトルについてもっと意見を聞かれる機会が多いのではないかなと思います。

 

最近の邦題の傾向

原題に日本語の副題をつけるような形は増えていますね。

 

「スポットライト 世紀のスクープ」(原題:SPOTLIGHT)

「LION/ライオン ~25年目のただいま~」(原題:LION)

とか。

 

確かに英語のタイトル(原題)って基本的にすごくシンプルなので、

副題があったほうがイメージが伝わりますよね。

 

あとここ10年くらいは、「原題そのままなのかな?」と思わせるけど実は違う!

というカタカナのタイトルも増えているように感じます。

 

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」(原題:THE POST)

オール・ユー・ニード・イズ・キル」(原題:EDGE OF TOMORROW)

「トラブル・イン・ハリウッド」(原題:WHAT JUST HAPPENED)

 

 個人的には、「原題変えるなら日本語にすれば?」と思いますが、(日本人に)カッコいい印象を与えるためカタカタ英語にするのでしょうかね?

 

「何これ?」な邦題

90年代や2000年代前半は、原題そのままカナ起こしの邦題が非常に多かったと思います。

 

イングリッシュ・ペイシェント」(原題:THE ENGLISH PATIENT)

キャスト・アウェイ」(原題:CAST AWAY)

ホワット・ライズ・ビニース」(原題:WHAT LIES BENEATH)

 

パッと見、どんなジャンルなのかもわかりません。。。

「ホワット・ライズ…」って、そのタイトル言わなきゃいけないなら映画館でチケット買うのも嫌になるレベル(笑)。

 

バック・トゥ・ザ・フューチャー」なんかも、今や誰もが知っていますが、もう少しひねりがほしかったなあと思います。

 

あと「ロード・オブ・ザ・リング」は、なぜ原題のように「リングズ」じゃなくて「リング」になったのかも、長年の謎です(指輪は1つじゃないのに!)。

 

配給会社の苦悩

 

つい最近も「ドリーム 私たちのアポロ計画」のタイトルに批判が集まって変更を余儀なくされるという騒動がありましたが、それほど邦題は重要なものということですね。

私は「ドリーム」は見ていないので何とも言えないのですが、配給会社の方たちも別に安易に付けたわけではなく、いろいろな思いがあったのではないかと思います。

 

配給会社の製作の方とお仕事したこともありますが、彼らは本当に

「いかに映画をよく見せるか」

ということにものすごい高いプロ意識を持っていて、感心させられたのを覚えています。

 

翻訳者は、あくまで監督・脚本家目線で「原作に忠実に」と思っていますが、彼らは「観客目線」なので、こちらにないアイデアを持っていて勉強になることが多いです。

 

さて、話がそれてしまいましたが、私も邦題のアドバイスを求められるような翻訳者を目指して日々精進してまいりたいと思います。

 

過去に制作会社のことも記事にしたので、ご興味のある方はどうぞ↓

 

www.mifumis.work