「黒子」に徹する字幕翻訳者が言われてうれしかった言葉
よく字幕翻訳者は「黒子」であると言われます。
読んでいることを意識させない「透明」な訳を作ることが、字幕翻訳者の使命だと。
失敗した時だけ注目される
それゆえに、観客や視聴者から
「この字幕はよかった」
なんて言われることはありません。
むしろ何も言われなければ、いい仕事をしたということでしょう。
その逆に誤訳などがあれば、そこだけ注目されて過剰に叩かれる。
翻訳者というものは、人から感謝されることが非常に少ない職業だと思います。
ですから、あなたが「人に感謝されたい」「褒められたい」と思っているなら、
翻訳者という仕事は向いていないと言えるでしょう。
字幕に過剰な演出は不要
独立して間もない頃、あるB級コメディ映画(DVDスルー)を担当しました。
当時はひよっこだったので、自分の担当作品がリリースされると
作品のレビューなんかを検索して読んでいた私。
あるレビュアーさんが「××のシーンの字幕が面白かった」と書いておられました。
当時は「面白い」と言ってもらえて喜んでいた私ですが、
字幕を「面白い」と感じさせてしまったのは、演出が過剰だった証拠だと
今は思います。反省すべきですね。。。
言われてうれしかった言葉
さて、褒められることの少ない翻訳者ですが、最近うれしい言葉を2つ頂きました。
1つは、担当者さんからのメールに
「いつも分かりやすい訳をありがとうございます」
と書いてあったこと。
以前チェックバックのことを記事にしましたが、
やはり担当者からも間違っていることは大いに指摘されますが、
「ここがよかった」と言われることは普通ありません。
たった一文でも感謝の言葉を頂けて、とってもうれしかったです。
もう1つは、
「 海外ドラマは字幕で見るのが好きなので、翻訳者の方に感謝!」
とはてなブックマークにコメントを頂けたこと。
もちろんこの方が私の担当作品を見てくださっているか分かりませんが、
どこかに見てくれている人がいるんだ~、とうれしくなりました。
さらに番外編。
アニメ作品の作業をしている時に、それを見ていた娘から、
「ママは仕事でアニメが見られていいね」
と言われたこと(笑)。
そうだね。
好きなことを仕事にできているということ、改めて娘に気づかされました。
まとめ
褒められなくても、「黒子」でも、好きなことを仕事にできるというのは
ありがたいことです。
ちょっとしたうれしい言葉を原動力に、これからも頑張っていきたいと思います。